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法話

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法話--平成23年2月--

十三仏(不動明王)--降伏(ごうぶく)の仏--

一口に「仏さま」と言っても実際には数多くの仏さまがいらっしゃいます。
大きく分けると「如来・菩薩・明王・天・声聞」になります。

  • 「如来」・・・ 釈迦如来、大日如来、阿弥陀如来、薬師如来など。
  • 「菩薩」・・・ 観音菩薩、地蔵菩薩、文殊菩薩、虚空菩薩、など。
  • 「明王」・・・ 不動明王、愛染明王、孔雀明王、烏枢沙摩明王など。
  • 「天」・・・・ 大黒天、帝釈天、毘沙門天、梵天、多聞天など。
  • 「声聞」・・・ 阿羅漢や悟りを開いた高僧、比丘、比丘尼など。

一切皆苦という娑婆世界の大海の波間で苦悩し、もがき生き続けるのがわれわれ人間の宿命なのです。
人に八万四千の煩悩があるかぎり、同じ数だけの苦悩が存在するのです。

そんな我々人間にとって、何よりも必要なことが抜苦と与楽です。
その問題解決のためにわれわれ仏教徒が常に拠り所としているのが様々な「仏さま」です。
その諸仏の代表格「十三仏」から学んでみたいと思います。

  • 「不動明王」【初七日】・・・・降伏
  • 「釈迦如来」【二七日】・・・・悟
  • 「文殊菩薩」【三七日】・・・・智慧
  • 「普賢菩薩」【四七日】・・・・知徳
  • 「地蔵菩薩」【五七日】・・・・抜苦、与楽
  • 「弥勒菩薩」【六七日】・・・・久遠仏
  • 「薬師如来」【七七日】・・・・健康
  • 「観音菩薩」【百ヶ日】・・・・抜苦、与楽
  • 「姿勢菩薩」【一周忌】・・・・法導
  • 「阿弥陀如来」【三回忌】・・・冥福
  • 「阿しゅく如来」【七回忌】・・忘悪
  • 「大日如来」【十三回忌】・・・清浄
  • 「虚空蔵菩薩」【三十三回忌】・智慧

広大無辺な慈悲と、法力をもって抜苦と幸福を招いてくださる諸仏です。
初回は「不動明王」です。
大日如来の化身ともいわれ十三仏では初七日の導師をつとめます。
酉年生まれの守り本尊でもあります。

不動明王は空海(弘法大師)により唐より密教とともに日本に伝えられたといわれます。
また大日如来の化身でもあり、不動明王を祀り御本尊とされているのはほとんどが真言宗系寺院となっています。

明王の「明」とは、「真言」を意味しており、真言(マントラ)の力を体現した仏さまなのです。
その真言は「ノウマクサンマンダ バザラダン カン」です。
最後の「カン」は「不動心」の意味で、不動心と不動堅固の行によって、煩悩の深い者を大空三昧(さとり)へ導いてくださる明王です。

また「不動」の意味としては、釈尊が悟りを求め菩提樹の下に座し「我、悟りを開くまではこの場を立たず」と決心された「不動心」ともいわれます。
そのとき、世界中の魔王が釈尊を挫折させようと押しかけたのですが、釈尊は穏やかに降摩の印を結び摩王の群れを降伏させたといわれます。
そのときの釈尊の心印が「不動明王」だといわれていますが、しつこい魔王たちを降伏させたのが「忿怒」だと考えると実に納得できます。

右手に宝剣左手に羂索(けんさく)という縄を持ち、猛火の火炎を背にした実に恐ろしい忿怒の相をした姿はすでにおなじみの通りです。
背後の炎は迦楼羅焔(カルラエン)といいます。
迦楼羅とは、毒を持った動物を好んで食べるという伝説上の鳥のことです。
この鳥のように毒を焼き尽くす炎ということから「迦楼羅焔」と言うのです。

その火焔の如く烈火の怒りの形相で人の心の内に迫ってきます。
右手に持った剣は宝剣です。宝剣とは正しい仏教の智慧からできている利剣のことです。
その利剣で迷いや邪悪の心を一刀両断にしてしまうのです。

また左手の羂索は智慧の縄です。悪事を働く者を縛束し、その悪い心を智慧の心に変えてしまうのです。
一見恐ろしい憤怒のお姿はまさに邪心を智慧に変えるための怒り(叱り)にほかならないのです。

あらゆる悪魔を降伏(ごうぶく)し、すべての障害を打ち砕き、仏道に従わない者を無理矢理にでも導き済度するためなのですが、その姿が釈尊の心印だと思うと改めて親しみを感じます。

不動明王の信仰が特に広まったきっかけは平安時代の平将門の乱だったといわれます。
将門を調伏させるために京都高尾山神護寺の不動明王像を借りて千葉の成田の地で調伏の護摩行を修行した結果その願いが叶ったのです。

手に負えない将門に勝ったことで「新勝寺」が創建され、その不動明王がそのままご本尊さまになったそうです。
また一説には、その不動明王自身が「自分はこの地に留まって関東の守護尊になると申されたとか。

その後特に鎌倉時代の元寇(げんこう)では全国各地で蒙古軍撃退の祈祷が行われましたがその主役を勤めたのが不動明王でした。
その御利益が"神風"となって現れみごと敵軍を壊滅させたのです。
こうして不動明王信仰がいよいよ盛んになっていったのです。

現代でも全国各地の霊場には多くの不動明王がご本尊として祀られています。
厄難回避から心願成就まであらゆる願い事に対する庶民信仰として大変な人気です。
中でも特に病気平癒の御利益があるとして薬師如来とともに親しまれています。

観音様のような慈愛に満ちた慈悲もあれば、一方このような厳しい怒りの慈悲もあるのです。
怒りの慈悲とはすなわち不条理に対する怒りです。
救いがたい私たちが犯すのが不条理という大罪です。

それにしても不条理に満ちあふれているのがこの人の世です。
同じ人間なのに理不尽な差別にさいなまれ、不幸に陥っている人がなんと多いことでしょう。
そんな不条理の元を忿怒の宝剣で断ち切ってくれる仏こそ不動明王なのです。

"不条理"を人間社会から無くすことは不可能かもしれません。
例えば「民主主義」も理想の金科玉条でしかありません。
ほんとうの自由平等を実現している国家社会など世界中どこにもありません。
どんな国家社会であれ、権力者を中心に権力と富が渦巻き不条理な社会が形成されているのが現実です。

貧困層の上に富裕層がのし上がり、その頂点に独裁者が君臨し、下から富を吸い上げまくるまさにピラミッド形社会を形成しているのです。
ピラミド形だけにその"構造"は極めて強靱ですが、一見安定感のあるピラミッドも長年の風化を免れることはできません。
あのエジプトも長年の不条理という"風化"によってついにピラミッド政権は崩壊してしまいました。

国民8200万人の頂点に立ち30年間の独裁と悪政の元なんと5兆8千億円もの巨万の隠し資産をため込んだというムバラク前大統領。
平均的国民一人当たりが1日2ドル以下で生活しているなかで、なんという人間でしょう。

人間にも"程"があります。
食うか食わずの極貧の国民を抱えていながら、国政の責任者としてこれ程まで貪欲非情になれるものでしょうか。
ついに悪政非道の運も尽きたとはいえ、国家・国民を犠牲にしてきたその大罪は万死に値するものです。
国民の勇気を結集させたインターネットの力こそ現代の迦楼羅焔かも知れません。

その火の粉が飛び火となって今中東が大荒れになっています。
特に今リビアが大変な情況になっています。カダフィも時間の問題でしょう。
その火焔こそまさに不動明王の怒りと言えるのかもしれません。
否アラーの神の怒りと言った方がよいでしょう。

世界にはまだまだ~大統領、~国王、~将軍など極悪非道の独裁者が多く存在します。
中東から上がった忿怒の火の手がもっともっと飛び火して世界中の悪政独裁者を業火によって焼き尽くして欲しいものです。

とはいえ日本も決して他人事ではありません。
内閣支持率がついに20パーセントを切ってしまいました。
庶民の味方だと思って期待した民主党にもすっかり裏切られました。
「権力」を手にした結果やはり利権主義者の化けの皮が剥がれたのです。
そんな連中の理不尽な愚策に国民は騙されません。

政局闘争に明け暮れ内政もダメ外交もダメ、理不尽の権化であるあの中国、北朝鮮、ロシアからもすっかり舐められてしまいました。
拉致問題や北方領土は一体どうなってしまうのでしょう。
実に情けない限りです。

アーアー不動明王よ。願わくばその怒りの宝剣で制裁を下してください。

合掌

曹洞宗正木山西光寺