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法話

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法話--平成25年7月--

四諦--苦諦その4 病苦その1 病は気から--

天寿をまっとうすることこそ人生最高の幸福だとして、その最大の障害の一つが病気かも知れません。
確かに病気さえなければ、人は絶対寿命といわれる120歳の天寿をまっとうできるかもしれないのですから、病気さえなかったら人生万々歳といえるでしょう。

しかし、人にとって病気は避けられないものであり、「老苦」もさることながら「病苦」こそ、人生「四苦八苦」中最大級のものと言えるかもしれません。
自殺の原因のトップが健康問題だとされていることからも病苦による苦悩苦痛が人にとって如何ほどのものかがわかります。

確かに、どんなにお金があっても、地位や名誉があっても、どんなにしあわせな家族に囲まれていても、病気であっては決して幸福とはいえません。
命の不安と先の見通せない絶望感にさいなまれ悶々とした日々を送ることほど不幸はありません。

病気とは、体に生理的、精神的異常が発生し、心身が正常な機能を営めず諸種の苦痛を訴える現象のことです。
では、病気の数は一体どのくらい有るのでしょうか。
よく「万病に効く」とか「風邪は万病のもと」などと言いますが、その数は「万」程にもなるのでしょうか。

18世紀ころにはその数およそ2400とされていましたが、20世紀にはいり、WHOの調査では3500種類がカウントされたそうです。
その後アレルギーやエイズなどの出現で病気の数は増え続け、今ではおよそ一万にもなるそうです。

万病の「万」には「よろず」や「たくさん」といった強調の意味があるのでしょうが、昔のことわざが今や文字通り現実のものになってしまいました。
昔認識できなかった病も勿論あったのでしょうが、人類の抱える病気は現代において確実に増え続けているのです。

では、人はなぜ病気になるのでしょうか。
病気は、「気の病」といわれるように、まず心の環境に原因があるようです。

そこで、病気をつくるという「マイナスエネルギー説」をご紹介します。
この説から改めてわかるのは、人間の体はまさに「心身一体」のものであるということです。

人は、心の中が悲観的、否定的になっているときは、身体も悲観的、否定的になります。
そのようなときは、体の中にさまざまな「悲観的物質・否定的物質」が形成され、それがDNA遺伝子を傷つけ、細胞の働きを弱めます。
そして、免疫力も低下し、その結果病気になります。

また、何十年も続けてきた悪い習慣、心の葛藤や苦しみ、心にため込んだ憎しみ・悲しみ、それが積み重なってくると、マイナスエネルギーが体に蓄積されていきます。
そのような見えないものが重なり積もって、体が耐えきれなくなったとき警鐘を鳴らします。
それが病気だと言えるのです。

確かに、何かに深く悩んだりして、それが続くと胃がいたくなり、胃潰瘍になったりします。
精神的ショックが大きいと、一晩で、髪が真っ白になる人もいます。
人間の精神状態は、それほど体に影響を及ぼすのです。

長年、心の中にため込んだ「憎しみや怒り、不満、妬み、劣等感、そして不安感など」のマイナスエネルギーが同じように自分の体を痛み付けて、それが病気となって現れてきたとしても、なんら不思議ではありません。

中でも「憎悪」は、いちばん破壊的な力が強く、そのエネルギーは体内で毒素を作り出し、体や精神に大きな害を及ぼすといわれます。
憎悪の毒素が積もりに積もると、自分の病気どころか殺人まで犯してしますことにもなりかねません。

その顕著な例が、最近起こった山口県周南の住民五人の惨殺、放火事件かもしれません。
小さな集落の中で、孤立と精神的軋轢の中で憎悪を募らせていった結果が、人として考えられない残虐な事件が起こってしまったのです。

まさに憎悪による毒素が心を狂わせた結果と言えるでしょう。
人の行為は、良いことも悪いこともすべて心次第なのです。
ですから、そんな心を守るためにあるのがまさに宗教なのです。

信仰とは毎日の祈りの中で心の状態を整えることなのです。
神仏が、心の中をスキャンし、毒素を見つけ出し、マイナスエネルギーを排除してくれるのです。
彼に何かまともな宗教でもあったなら、きっと結果は違っていたかもしれません。

このように、マイナスエネルギーが心に及ぼすことは計り知れません。
その意味で、犯罪も病気もマイナスエネルギーが大きく拘わっているのです。
では、そのマイナスをプラスに変えるにはどうしたら良いのでしょうか。

心で思うことは体の細胞へと伝わることであり、それはDNA遺伝子に影響を与えているということであり、ネガティブな思いは、自分の体に大きなダメージを与えるということであれば、「ポジティブな思い」を持つことです。

私たちの体は60兆個の細胞からなり、1秒間に50万個の細胞が生まれ変わっていると言われます。
皮膚の細胞は四週間で、胃の内膜は五日で、肝臓の細胞は六週間で、骨格の細胞は三ヶ月ですべて入れ替わっているというのです。

心の環境が体に影響を与えるならば、毎瞬毎瞬、自分が思ったり、感じたりしていることが、新しい細胞に影響を与えているということになり、思考の一つ一つが心の環境を作り上げ、肉体に影響を与えているということます。

であれば、多くの場合、病気は自分で作っていることが多いのであり(先天的病気や子供の病気などは例外)、例え、どんな病気であっても、心の持ちようで明るい希望がもてるということにもなります。

つまり、健康を保つためには、まず心の健康です。
そして、それに必要なことが、「ポジティブな思い」です。
その思いは「感謝」と「笑顔」からです。

自分の体は自分のモノであって自分のモノではありません。
先月の「養生訓」にもあるように、「ひとの身体は天地・父母の恵みを受けて育ったものであるから、私のみによって存在するものではない。天地の賜物をいただいているのだ」という認識が大事なのです。

私たちの体は、起きているときも、寝ているときも心臓を動かし、血液を運び、食べ物を消化してエネルギーを作り、片時も休まず働いてくれています。
考えてみれば、実にありがた~いことではありませんか。

生まれてこのかた、思えば、心の欲するまま、好きな物を飲み喰いし、勝手し放題に体を酷使してきました。
どんな姿勢でいても、何をやっても、体は休むことなく働き続け、命を支えてくれています。

「いつも、いつも、ありがとう」「今まで何一つ文句も言わずに、あらゆる思いと行いを全部受けとめてくれて、ほんとうにありがとう」と。
もし、そのような感謝ができれば、「ポジティブな思い」が一つ一つの細胞に伝わって、免疫エネルギーを高めるでしょう。

「感謝の心」があれば「笑顔」になれます。
実際、笑うことで免疫力が高まり、癌が抑制されるというのは今や医学界の常識になっています。
「笑う門には福来たる」はどうも本当のようですね。

合掌

曹洞宗正木山西光寺