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法話

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法話--平成23年3月--

--心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます--

3月11日、東日本に大震災が起こりました。
東北太平洋沖に発生した巨大地震によって引き起こされた巨大津波の直撃を受け海岸地帯はまさに壊滅状態です。その惨状に言葉がありません。
予想だに出来なかったまさに未曾有の大震災です。

発生から数週間が過ぎましたが死者行方不明者の数は日を追って増え続け三万人に達するかもしれない状況です。
その犠牲となった方々のご冥福を心からお祈り申し上げますと共に被災され二十幾万人の方々に心からお見舞いを申し上げます。

「自分は助かったけど、家族が居なくなって、生きていてよかったのかどうかわからない」と言っていた方が何人もいました。実につらい現実です。
家族や家や財産を失ってしまった人たちの絶望感極まる心痛如何ばかりか、ほんとうに言葉がありません。

「天災は忘れた頃にやって来る」とはいいますが、地震国に暮らす我々日本人は日頃決して忘れているわけではありません。
特に今回の東北太平洋側の人々は普段から地震と津波に対する防災意識は相当高かったようです。
にも関わらず想定し得なかった巨大津波に為す術がなかったのです。

連日の報道から日毎その惨状が明らかになっていますが、何よりも急を要するのは被災され苦しんでいる人たちの救済です。
何よりも辛いのは飢えと寒さです。
一刻も早く少しでも楽になるよう日本中が支えるしかありません。

実際日本全国から支援のうねりは日毎大きくなっています。
義援金活動も活発で過去に比を見ないほどの勢いです。
海外からも多くの救援隊が駆けつけてくれていますし、多くの支援物質や相当額の義援金も届いているようです。実に有難いことです。

支援活動はどんどん増え続くでしょうが、これで十分だと言えることは決して有りません。
無事な人たちがその辛さを今こそ共有すべき時なのです。
当分は物質的支援が中心になりますが、その後は精神的支援が大きな問題になるでしょう。
特に心的外傷によるストレス障害(PTSD)の問題です。

家族を失い家も財産もすべて失った人の絶望感たるや私にはとても想像できません。
これから時間が経つにつれて目に見える環境はどんどん回復に向かうでしょうが、目に見えない心の傷は地獄の記憶をフラッシバックさせるのです。

そんなショックと悲しみの中、さらに原発の問題が被災者を襲っています。
地震国だけにあらゆる想定の元に造りあげた盤石の原発だった筈です。
それが破損し制御不能という、まさかの想定外が起こってしまったのです。
連日その情報が伝えられてはいますが実際のところ私にはよくわかりません。
ただ分かるのは、終息に向かっているとはとても言えない現実です。

すでに放射能汚染が農産物や畜産物に現れています。風評被害も拡散しています。
海外からの観光客は激減、国内でも各地の観光やイベントも自粛され、さらに計画停電によるダメージで日本はさらなる疲弊に追い込まれています。
先行きの見えない日本、一体どうなってしまうのでしょうか。

しかし、思い起こしてください。
戦後のあの焼け野原から立ち上がった日本です。
65年目に迎えた今回の国難ですが、日本国民が心を一つにして、この500年に一度とも1000年に一度とも言われる試練に立ち向かっていくしかありません。

「和をもって貴しと為す」の「和」の国日本です。
和の心とは「おもいやり」から始まります。「うばいあったら足りなくなる。
分け合ったら余る」という思い遣りの心がすさまじい勢いで日本中から寄せられています。
支援中のアメリカ軍兵士が、被災者の礼儀正しさに感銘したとの報道がありましたが、「礼儀」こそ「おもいやり」の表れなのです。

「自分に何ができるのか考えたらここに来るしかないと思った」というボランティアの若者がいました。
そんな多くの若者が被災地に赴き親身になって支援活動に邁進しています。
そんな"菩薩"が多くいるかぎり日本は"無縁社会"ではありません。
必ず復興します。

しかし、それにしても天災は実に不条理です。
地球よりも重いという人命を何万と奪い去ってしまうのですから。
何の罪もない人から命だけではなく家も財産も一瞬のうちに奪い去ってしまうのですから。
亜鼻地獄に落とされた悲しみと絶望感を一体どこにぶつければよいのでしょう。
天災は仕方ないと言ってしまうにはあまりにも理不尽です。

しかし、やはり、今となっては仕方のないことかもしれません。
「仕方ない」とは何もしないことではなく、過去を受け入れ心を共有するということです。
心を共有するということは自分にできることは何かを考え実行するということです。

そしてあとは祈るだけです。
犠牲者の冥福を祈り、生き残った命を大事に、回復を祈り、健康を祈り、無事息災を祈るのです。
そして日本の未来を祈るのです。

合掌

曹洞宗正木山西光寺