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法話

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法話--令和3年3月--

東日本大震災から10年 ―震災に思うこと ―

あの日、テレビで見た津波のすさまじさに「うわあ」と驚き、日本でもこんなことが起こるのかと唖然としたことを思い出します。
あの物凄い光景は瞬く間に世界中に発信され「ツナミ」の恐ろしさを改めて世界中に知らせました。

死者・行方不明者、関連死を含め2万2,192人が犠牲になった東日本大震災から10年になります。
10年ひと区切りという言葉もうかがえますが、いまだ2,526の行方不明者がいます。
そんな親族にとっては区切りなどありません。

自宅跡に立ち妻の名前を呼び続ける男性、潜水技術を学び独りで海中を探し回る人、同じ海岸を何度も繰り返し行き来して不明の家族を探す人がいまだにいます。
家族や財産を無くし絶望のどん底に陥ったその悲しみと苦しみは如何ばかりのものでしょうか。

3年前の11月、教区研修旅行に参加し、気仙沼、南三陸町、石巻市方面を訪れました。
特に悲惨だった大川小学校を訪れ慰霊碑の前で犠牲となられた74名の児童と10名の職員に追悼の読経回向を致しました。

その実態にふれあらためて思うのは、津波の恐ろしさは勿論ですが、犠牲となられた人たちの無念とその不条理です。
海岸から4キロも離れていて、地震から津波到達まで、恐らく40~50分あったのになぜ裏山に逃げなかったのかという疑問です。

なぜすぐに裏山に避難しなかったのか・・・悔やんでも悔やみきれません。
大川小学校の惨劇への疑問はこの一点に集約され裁判にもなりました。

なんと、石巻市は津波到達を想定していなかった、市の「防災ガイド・ハザードマップ」は、同小学校が避難所にさえなっていたのです。
裏山にある「津波到達点」の標識をみて、まさに「想定外」を実感しました。

その後10年、日本全国災害のなかった年はありません。
巨大な地震が相次ぎ、毎年のように台風や豪雨による水害が全国各地で発生し多くの犠牲者が出ました。
「災害は忘れるころにやってくる」どころか、忘れないうちにやってくるのです。

さて、今一番懸念されているのが南海トラフ大地震と首都直下大地震です。
今後30年以内に「南海トラフ」が起こる確率が70~80%、「首都直下」の確立が70%、因みに岩手沖北部地震が90%だと推測されています。

首都直下地震の場合、死者が2万3千人、高潮が起これば被害は100兆円にもなり、直接被害額は東日本大震災の約3倍、首都圏が被災するため全国に及ぶ経済活動への影響を含めると、20年間の経済被害額(GDP損失など)最大731兆円(土木学会試算)にもなるそうです。

南海トラフ地震の場合、死者はなんと32万人超が予測されます。
その内訳は津波で23万人、建物倒壊で8万人、火災で1万人です。
直接被害額は220兆円、阪神大震災の約17倍、東日本大震災の約10倍にあたり、そこから復興の20年間の経済被害額(GDP損失など)の試算を合計すると1,410兆円にもなるとか。

首都直下地震と南海トラフ地震の二つの発生の確率を単純にプラスすると、これから30年以内にどちらかの地震が発生する確率は限りなく100%になります。
東日本大震災で、あれだけの恐ろしさを知った日本は、更なる未曾有の災害に対する覚悟と備えが絶対に必要です。

覚悟だけあっても備えが不十分で同じような被害を繰り返すとしたら、世界から同情よりも誹りを受けることにもなりかねません。
再度言いますが、「首都」か「南海」どちらかが30年以内に100%発生するのです。

すでに対応を始めているところもあるようですが、まだまだ不十分です。
政府は地方それぞれの行政に任せるのではなく、国家プロジェクトとして国主導で200兆円規模の地震対策、津波対策の出来る限りのインフラ整備をすべきです。

内閣府は南海トラフ地震の場合、津波で受ける建物の被害は最大で170兆円と被害推計額を発表していますが、インフラの耐震化などに40兆円ほど投資すれば3~4割ほど被害額は減らせるとのこと。
金額にして509兆円ほどの被害額が減るとのことです。

このままでは、首都直下で731兆円、南海トラフで1,410兆円の被害が想定され、合わせて2,141兆円にもなります。まさに日本壊滅です。
仮に200兆円の投資でその被害を半分に抑えられるとすれば、被害額を1,000兆円以上も減らせるのです。

もちろんお金だけの問題ではなく、首都直下と南海トラフを合わせた凡そ35万人といわれる犠牲者の数も大幅に減らせる筈です。
大切な人命や財産のことを考えたら200兆だろうが300兆だろうが投資すべきでしょう。

そんな大金どうするんだという疑問も当然です。
ここからは少し財源の話になります。すべて国債と政府の財政出動で賄います。
しかし、今でも国の借金が1100兆円もあるのに、これ以上借金したら日本国は財政破綻してしまうのではと心配する人が多いかもしれません。

最近話題になっているMMC理論からすると、先進国で自国建て通貨を発行している国では、いくらでも自前の通貨を発行出来るのです。バンバンお金が刷れるのです。
但し、お金の量が物の生産能力を超えハイパーインフレにならない範囲に限られます。
それが守られれば国がデフォルト(倒産)になることはありません。

ですから、200兆円でも300兆円でもお金を投じて国家事業として大胆な防災事業を展開するのです。
そのお金が回ることで雇用も生産能力も新たに生まれ、経済も活性してデフレ脱却にも繋がり、まさに一石二鳥にも三鳥にもなるのです。

最後に原発の話ですが、原発だけは止めた方が良いでしょう。
福島の事故では16万が避難生活を余儀なくされました。
今でも5万人近くの人達が全国各地で避難生活を続けています。

福島の原発事故の処理費用は21.5兆円といわれます。
放射能が3万年も続くというデブリが880トンもあるといいます。
その廃棄処分に100年から300年掛かるといわれます。

汚染処理水を溜めた大型タンクが1000基にもなり、間もなくタンクの置き場所が無くなるとか。
仕方なく処理水を海洋に放出するという案が出ていますが、風評被害を免れない漁業関係者からすれば当然受け入れられません。

日本には原発が54基あるそうです。
今4基が再稼働していて、その電力の供給率はたったの3%です。
原発はクリーンエネルギーと言われますが、使用済み核燃料の処分先さえ決まっていません。
トータル的に莫大なコストがかかるのです。

地震大国にとって原発への不安は計り知れません。
さらに戦争にでもなれば先ず狙われるのは原発です。
敵国同士お互いが相手の原発を攻撃すれば相互が破滅するだけです。
人はどこにも住めなくなります。想定外ではありません。

試算からも原発に頼らなくても再生化エネルギーで十分賄えるそうです。
人類は自然に還らない物を生産すべきではありません。
原発もアスベストもプラスチックも自然に還らない物を作るのは天地の理に反することです。

天地の理に逆らって人類に未来はありません。
須らく科学は地球ファーストでなければなりません。
異常気象は地球からの警鐘です。
大家(地球)さんに感謝し、労わなければ、やがて店子(人類)は追放されてしまうでしょう。

合掌

曹洞宗正木山西光寺