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法話

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法話--平成24年11月--

十三仏(大日如来)--密教の仏さま--

今回は13仏の12番目の仏さまで大日如来のお話です。

13回忌の導師で、真言は、「オン バザラダト バン」です。
「大日」とは、サンスクリット語で「マハーバイローチャナ」と言って「偉大な輝くもの」という意味です。

大日如来の名前は、太陽である「日」に「大」を加えて「大日」と名付けられたといわれます。
太陽を中心とする宇宙そのものが大日如来の身体であるという考えです。
宇宙に存在するものは全て大日如来そのものであり、すべての諸仏諸菩薩は大日如来から派遣されたものと捉えます。

真言密教の根本教典である「大日経」と「金剛頂経」には、衆生の救済者として諸仏諸菩薩をはじめ諸神が説かれていますが、これらの全ては大日如来より出生し、大日如来の徳をそれぞれが分担し、衆生済度に当たられると説かれています。

根本教典である両経には、大日如来の徳の現れ方を、多くの諸仏との関係において説かれていますが、その関係を図式したものが曼荼羅です。
宇宙に存在する一切のものは大日如来に胎蔵されるもの(胎蔵界曼荼羅)であり、また一切のものは何ものにも侵されない堅個な智慧の顕現(金剛界曼荼羅)であると考えるのです。

つまり、密教において、大日如来はそのものが宇宙の実体であり真理なのです。
大日如来はいわば宇宙そのものを神格化したものと捉えることができます。
ですから曼荼羅の中では、大日如来は中心に鎮座されまさに宇宙の一切を統治されていて、その功徳によって私たち人間はすべて即身成仏ができると説きます。

また別名を毘廬遮那仏(びるしゃなぶつ)とも、遍照如来(へんじょうにょらい)とも言います。
その光明が宇宙全体を遍く照らし、常に法を説いているとしています。
その説法の言葉はあまりにも深遠であるために我々凡夫には秘密とされていることから、「密教」といいます。

また、有名な奈良の大仏も同じ毘廬舎那仏ですが、奈良の大仏(東大寺)は華厳宗で、「遮」を「舎」と表して差別化を図っています。
陽光である毘廬舎那仏の智慧の光は、すべての衆生を照らして、衆生は光に満ち、同時に毘廬舎那仏の宇宙は衆生で満たされているとされます。

さて、大日如来といえば弘法大師空海の存在を抜きには語れません。
日本に本格的な密教を伝え真言宗の開祖となったのが言わずと知れた空海です。
子供のころから密教の「大日経」に強い興味をもち、奈良の諸寺で多くの教義を学び、31歳の若さで遣唐使に選出された秀才でした。

長安の都で修学し、「遍照金剛」の名号を得て、正統密教の後継者に指名されました。
膨大な教典や法具を携え日本に帰国した空海は、嵯峨天皇に見いだされ、当時の仏教界の重鎮、比叡山の最澄にその密教を指導したと言われます。

高野山・金剛峯寺(こんごうぶじ)を開創し、密教の根本道場とし、宇宙の真理を体現する大日如来と神秘体験をもって成仏を目指すという真言密教の新しい悟りの形態は急速に信仰を広めました。

さらに空海は、唐から最新の学問、医学、土木技術なども持ち帰り、満濃池(まんのういけ)を築いたり、私立の教育施設「綜芸種智院」(しゅげいしゅちいん)などを開設し、仏教のみならず、儒教、医学、土木、音楽などの普及に貢献されたのです。

承和2年(832)8月、空海は高野山においてその62年の生涯を閉じました。
後世に起こった入定身信仰に基づき、空海の死を「入定」と称しています。
「入定」とは「死」ではなく「禅定」に入るということであり、真言宗では高野山の奥の院御廟で今も生き続けていると信じ、現在も食事と衣服が供えられています。

醍醐天皇より「弘法大師」の諡号(死後天皇より贈られる称号)が贈られ、千年の時を越え、「お大師さん」として崇敬されています。
歴史上、天皇から下賜された「大師号」は全27名に及びますが、一般的に「大師」といえば「弘法大師」を指すようになっています。

四国には日本一有名で人気の高い空海ゆかりの八十八箇所霊場がありますね。
その巡礼に赴くお遍路さんは年間30万人にもなるそうですが、今も弘法大師空海が同行してくれるという「同行二人」が信じられています。

空海によって開かれた日本仏教の一大聖地・高野山は、空海入定千年の時を越え、後を継いだ僧侶や信者によって人々の信仰と崇敬を集めて発展してきました。
そして、平成16年7月には「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコの世界遺産に登録されました。

弘法大師にまつわる伝説は日本各地に多く残されています。
大師が杖を突くと泉が湧き、井戸や池になったといった伝承をもつ場所は日本全国で千数百件にのぼるといわれています。

大師が発見したとされる温泉は、北は山形県のあつみ温泉から、西は長崎県の波佐見温泉まで、おおよそ26ヶ所にものぼります。
ただ中には、温泉を探り当てた際に、宗祖たる空海の名を借用したものもあるようです。

弘法大師が由来とされる伝説や伝承も実に多く存在します。
その一部を記しますと、ひらがな、いろは歌、灸、讃岐うどん、手こね寿司、九条葱、曜日、水銀鉱脈の発見などなど。
有名がことわざや慣用句なども多くありますが、その中から二つほど有名なものをあげてみました。

「弘法も筆の誤り」
空海は天皇から勅使を受けて、大内裏応天門の額を書くことになったのですが、「応」の一番上の点を書き忘れてしまいました。
空海は掲げられた額に向けて筆を投げつけて直したといわれます。

「護摩の灰」
弘法大師大師が焚いた護摩の灰と称し、御利益があるといって売りつけた旅の詐欺師がいたそうです。
そのことが転じて旅人の懐を狙う泥棒全般を指すようになったそうです。

大日如来という大きな宇宙的思想を体感し、国とか民族を越えて、人間や人類に共通する原理を会得した人・・・
インドで何百年もかけて成熟してきた純粋密教を7年間の修行のもとに、インドにも中国にもなかった独自の理論体系を築き真言密教を完成させた人・・・
宗教界に留まらず、現実社会でもパワフルに活躍し、一人の人生とはとても想像もつかない数々の功績を残した人・・・
人並みはずれた知力、感性、そして才能に恵まれていたまさに傑出の天才でした。

そのような指導の天才が今のこのどうしようもない日本には必要です。
まもなく衆議院の選挙が始まります。
多くの新党が乱立し耳障りの良いことを並べ立てていますが、一体どの党の誰を信じたらよいか一般の国民にはまったく分かりません。

願わくは、真の指導者が出現され、少しでも国家国民を良い方向に導いて欲しいものです。
末法といわれる今の世を正してくれる現代の「お大師さま」はいないものでしょうか。

合掌

曹洞宗正木山西光寺