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法話

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法話--平成26年11月--

四諦--苦諦その4 病苦その2 病気にならない生き方 その16 ―依存症―

精神疾患の一つに「依存症」があります。
油断すると誰でも罹ってしまう恐ろしい病の一つ、それが依存症です。
決して他人事ではありません。すでにあなた自身にも何らかの依存症の危険があるかもしれないのですから。
是非、しっかりとした知識と強い意志を身につけ、ガードしたいものです。

依存症は、とことん行き着けば生命に関わります。
アルコールや薬物などの物質嗜好はいうまでもありませんが、過程嗜好だって、例えばギャンブルで借金がかさんで命を絶つ。失踪などで社会的存在を自ら末梢するなどの不幸な結果に到ることが実に多いのです。

ガードするには、まずそのメカニズムを知る必要があります。
人にとって「快感」こそ最高のしあわせです。
快感に浸っているトキほどの幸福感はほかにありません。
しかし、実はその快感こそ問題なのです。

人間の脳は、快感を感じた時にドーパミンという脳内物質を分泌します。
脳は、このドーパミンが分泌された行動を繰り返すように指令を出します。
この作用は、うまく働けばやる気や行動力に繋がりますが、悪く作用すると依存症のきっかけになってしまうのです。

たとえば、ギャンブルで勝つ→快感・幸福感→ドーパミンが分泌→脳が同じ行動をするよう指令→ギャンブル
この繰り返しがギャンブル依存症になるメカニズムです。

一度味わった快感は脳にしっかり刻み込まれます。
その快感は忘れられない幸福感となって何よりも優先的にその行為を求め繰り返してしまうのです。
のめり込んだ結果、正しい判断も、常識ある行動も出来なくなってしまいます。

知ってのとおり依存症には実にいろいろあります。
ギャンブルのほかに、アルコール、薬物、危険ドラッグ、インターネット、ゲーム、買い物、過食、ダイエット、セックス、占い・・・等々。
依存症としてのメカニズムはどれもほぼ同じだということで、今回は特に「ギャンブル依存症」にスポットを当ててみました。

依存症の人が反省するとき、あるいはその家族が語るとき、よく、「意志が弱い」「自分に甘い」と言うといわれます。
しかし、ある体験者に言わせますと、「意志を強く持って、何かを頑張った分、バランスがとれなくなって違う何かで気を紛らわさずにはいられなくなった」というのです。

また、「完璧主義」「自分に厳しい」「もっと頑張らなくちゃ」と自分自身を追い込んでしまい、ストレスを抱えきれず嗜好に逃げ込んだ結果だという人もいます。
また、依存症になる人は、けっして「ダメな人間」ではなく、むしろダメ人間にならないように頑張った人も多いということです。

人の心は思っている以上に弱いものです。
この事実をしっかりと脳に刻み込んで自戒し自衛するしかありません。
まさに「君子危うきに近寄らず」です。
不幸にしてすでに依存症に罹ってしまった人、またその心配のある人は一刻も早く治療すべきです。
病である以上早期発見早期治療が鉄則です。

さて、日本には、戦後のどさくさの中で特例法で解禁された競馬、競輪などの公営賭博があります。
また、パチンコ、パチスロも、賭博ではなく「遊技」という扱いで、世界に例がないほどの日常的な賭博場となっています。
国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長は「パチンコやスロットなどが身近で、日本は世界の中で病的賭博の割合が最も高い国の一つ」と言われます。

ギャンブル依存症の疑いがある人が推計で536万人に上ることが、厚生労働省研究班の調査でわかりました。
日本人は、なんと年間5兆6000億円を賭博で負けるという、日本は世界最大のギャンブル大国なのです。

ギャンブル依存症の有病率は成人男性で9.6%、女性1.6%(08年の厚生労働省委託研究結果)と世界でもずば抜けて高い割合なのです。
人口に換算すれば560万人が依存症という衝撃的な実態です。
日本は世界でも最悪のギャンブル依存症大国だったのです。

安倍総理自身が言うとおり、国民の生命・財産を守ることがまさに政治の大義です。
だとすれば、政治家は国民をあらゆる災難から守り、危険から遠ざけることが務めの筈です。
ところが、安倍総理は成長戦略の目玉とかいってカジノを合法化しようとしています。
国民をこれ以上ギャンブル依存症にしてもよいとでも思っているのでしょうか。

2020年のオリンピック開催までに1~3カ所、最終的には国内に10カ所程度カジノを開設するとのもくろみだそうです。
日本弁護士会が開いたカジノ問題を考える集会で、静岡大学の鳥畑与一教授は講演で、依存症治療や中毒者の対策に必要な社会的コストが、カジノから得られる「利益」をはるかに上回る可能性があると指摘しています。

カジノ議連の思惑は外国観光客を当て込んでいるようですが、日本に進出を狙う米国、ラスベガスなどのカジノ資本のターゲットは、日本人の1600兆円にのぼる個人金融資産だそうです。
喰うか喰われるか、だがこれは日本に利がない文字通りの"バクチ行為"にほかなりません。
それが分からない政治家はバカとしかいえません。

このまま安倍総理に任せていたのでは、日本という国家自体がギャンブル依存症になりかねません。
だいたいギャンブルで稼ぐという発想自体姑息で不健全で不道徳です。
個人にとって良くないものが国家に対して良い筈もありません。

各種世論調査ではカジノ解禁に「賛成」が3割、「反対」が6割だそうです。良識を持った日本人のマジョリティに誇りを感じます。
良識のない安倍総理はじめ超党派で構成する200人以上のカジノ議連の人達は是非考え直すべきです。
国民のマジョリティに従った政治でなければ必ず失敗します。

今回の総選挙で問われるのは、民主主義の立憲主義や平和主義などへの評価です。
約70年におよぶ戦後体制のあり方を問い、未来を決める一大選挙です。
多くのメディアはアベノミクスの評価を問う選挙と位置づけていますが、経済政策に隠された民主主義が問われているのです。

政府が国民のためにあるのか、国民が政府のためにあるのかです。
また、個人の尊厳に立って基本的人権を尊重し、国民の権利を充実させていくのか。
それとも国家の権利を拡大して基本的人権を制限していくのか。

なんでも、自民党案では「基本的人権は永久の権利である」と宣言する現憲法の条項が削除されたとか。
これが本当のことならとんでもないことです。
これが事実として、なお安倍政権を支持する人がいるとしたらまったくどうかしています。

今の阿倍政権が目指しているのはまさに国家権力で国民を縛ることです。
国威を発揚し戦争のできる体制にすることです。時代錯誤も甚だしいかぎりです。
しかし、国民はバカではありません。
拙僧は良識ある日本人のマジョリティを信じます。

「政教分離」とは、宗教家は政治に参加するなということであり、口を出すなということではありません。
しがらみに囚われず、声を上げて正しい道を説くことこそ宗教家のつとめです。
お釈迦様だったら、道元禅師だったら多分そうするでしょう。

それにしても我関せずの仏教界。自らの存在意義を問うてみてください。
お布施を頂くことだけが仕事ではないのです。
仏教を心から信じ釈尊に心から帰依する僧侶なら何をなすべきかに迷いはないはずです。

合掌

曹洞宗正木山西光寺