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法話

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法話--平成25年9月--

四諦--苦諦その4 病苦その2 病気にならない生き方 その2

九月はお彼岸ですね。
彼岸とは、彼の岸、すなわち悟りの岸に向かって精進しましょうという、いわば"修行週間"ともいうべきものです。

修行というと一寸大げさかもしれませんが、仏教の教えに一層帰依しましょうということです。
一般人にとって平たく言えば、普段の生活習慣を見直しましょうということです。
寒暖の差のない爽やかなこの時期、ご仏前に到り静かに自己を見つめ、反省し自問自答しながら更なる生活習慣の改善を目指そうということです。

ところで、毎年のように秋のお彼岸にご先祖供養をたのまれるお宅があります。
子供たちは都会に住んでいる独居のおばあさんのお宅です。
今年も御仏壇にご供養をたのまれ早朝に卒塔婆をもって伺いました。

簡素ながらも、いつも掃除と後片付けが行き届き整然とされているお宅です。
その日も庭は手入れがされていて、まだ早朝の空気のなかに清々しさが残っていました。
帰り際、拙僧が「いつもきれいにされていますね。雑草がひとつもないじゃないですか。」と言いました。

すると、おばあさんがいいました。
「草取りが好きなんです。雑草を取っていると気持ちが落ちつきますし、いいですね。雑草とることで雑念もとれるというのはほんとうですね。」

拙僧ドッキリして、「すごいことを知っていますね。」というと、「ヤーダ、いつか方丈さんから聞いたことですよ。草取りするのと坐禅するのは一緒だと言っていましたよ。」

拙僧またドッキリ。「そうでしたか。」と言いつつほとんど記憶にない自分に呆れながらお宅を後にしましたが、何かとても爽やかな気分でした。
一方、翻って我が寺庭を見ると結構雑草だらけで、拙僧自身雑念の多い理由を改めて自覚した次第です。
未だ彼岸の内、「坊主の不信心」と言われないように"反省"したいと思います。

さて本題に入りましょう。
前回より、「病気にならない生き方」について学んでいますが、新谷先生が、40年以上もの間、のべ35万人の胃腸を観察しながら集めた臨床データから得た結論は、人の健康を司っているものは「エンザイム」だったのです。

先生の健康学は、エンザイムを理解することこそまさに健康とアンチエイジングへの道だとする理論です。
そこで、今回はまずエンザイムとは一体どんな物なのかについて学んでみたいと思います。

エンザイム(enzyme)とは、「酵素」のことであり、植物や微生物や生物の体内で作られるタンパク質性の触媒の総称で、植物でも動物でも、生命があるところには必ずエンザイムが存在しているのです。

物質の合成や分解、輸送、排出、解毒、エネルギー供給など、生命を維持するために必要な活動にはすべてエンザイムが関与しているという、その酵素の働きによって、生物は生きるために行うありとあらゆる行為を可能にしているのです。

生物はまさにエンザイムがなければ、生命を維持することができない存在なのです。
ですから、「人は、エンザイムの働きなくして一秒たりとも生きてはいけない」というのが先生の持論です。

その人間の体内で働いているエンザイムは、五千種以上あると言われています。
なぜこれほど多くの種類のエンザイムがあるかというと、一つのエンザイムは特定の一つの働きしかしないという特徴があるからです。

たとえば、同じ消化酵素のエンザイムでも唾液に含まれる「アミラーゼ」は、でんぷんにしか反応しませんし、胃液に含まれる「ペプシン」はタンパク質に、膵臓の「リパーゼ」は脂肪にしか反応しません。

エンザイムには体内で作られるものと、食物として外部からとるものの二種類があります。
体内で作られるエンザイムの生成方法は大きく分けて二つあります。
一つは細胞内での生成であり、もう一つは体内の常在菌による生成です。

まず細胞内でのエンザイムの生成をスムーズにするためには、その原料となる「エンザイムをたくさん含んだ食物」を摂ることが必要です。
そして、体内の常在菌による生成を増やすためには、腸内環境をよくすることが必要なのです。

その腸内環境をつかさどるものこそ腸内細菌です。
私たちの体の中で大量のエンザイムを生成しているのが腸内細菌だからです。
もし腸内細菌がいなくなったら、人は健康に生きていくことはできません。
私たち人間にとって腸内細菌は、健康に生きていくためには必要不可欠なパートナーなのです。

腸内細菌は、およそ三千種類ものエンザイムを作っているといわれています。
有益なエンザイムを生み出す腸内細菌を、一般的に「善玉菌」と呼び、他方「毒素」を生み出すものを「悪玉菌」と呼んでいます。

さらには、腸内細菌と体細胞は互いに自分たちの情報を出し合い、コミュニケーションを重ね、そのときの状況にもっともふさわしいエンザイムの情報を遺伝子に送っていたのです。

「生命を維持するために必要な活動にはすべてエンザイムが関与している」といいましたが、実は遺伝子にも大きく関わっていたのです。

私たちの体を構成している約六十兆個の細胞は、すべて同じ遺伝子をもっています。
でも、実際には、骨や筋肉、皮膚、爪、髪の毛など、部位によってまったく違った個性を発現しています。

それは、同じ遺伝子をもつ細胞が、遺伝子の情報を切り替えしそれぞれの部位に発現させるからです。
その情報の切り替えにもエンザイムが関わっていたのです。
さらに、その遺伝子のもっている情報を読み出すためにも、エンザイムが必要なのです。

つまり、エンザイムを作るには遺伝子の情報が必要であり、遺伝子から情報を引き出すためにはエンザイムが必要であり、遺伝子のスイッチを切り替えるのにもエンザイムが使われていたのです。

これら、遺伝子、エンザイム、微生物の間で交わされるこの「トライアングル・コミュニケーション」こそが、私たちの健康をつかさどっているもっとも根幹の部分ではないかということが最近わかってきたのです。

それは、この三者のコミュニケーションがスムーズに行われることによって免疫システムが完璧に機能したとき、健康は保たれるからです。
従って、その健康のカギを握っているのは、まさにエンザイムの体内保有量ということになります。

エンザイムの体内保有量が多ければ、新陳代謝が正常に行われるのはもちろん、体内の解毒作用や免疫システムも正常に働き病気を防ぐことができるのです。

つまり、健康で長生きするためには、体内のエンザイムを増やし、活性化させることが必要なのです。
次回は、その方法について学んでみましょう。

合掌

曹洞宗正木山西光寺