今月平成23年度の国民医療費が発表されました。
なんと38.8兆円にもなったそうです。一人当たりに換算すると30万1,900円にもなるとか。
さらに毎年数パーセントずつ増え続けていくというのですから、大変な問題です。
22年度の対GDP(国内総生産)比では、7.81%、対 NI(国民所得)比は 10.71%にもなっています。
国民医療費の約25%が国の一般財源でまかなわれていますので、国の財政を圧迫しているのは確かです。
医療費の急激な増加の理由としては、まず高齢化が進んでいることが挙げられます。
高齢者は若者の5倍の医療費がかかるといわれています。
しかし、問題は単に高齢化だけではないのです。
米国ナンバーワンの胃腸内視鏡外科医の新谷先生は、「高齢になれば、健康な人でも体の機能は低下します。しかし、機能が低下するということと、病気になるということはまったく別のことです。
元気に生活している百歳の人と、寝たきりの百歳の人、その違いを生んだのは、年齢ではありません。両者の違いは、それまでの百年間をどのように積み重ねてきたのかによって生じるのです。
ひとことでいえば、健康でいられるか否かは、その人の食事、生活習慣しだいだということです。食事、水の補給、嗜好品の有無、運動、睡眠、仕事、ストレスといった日々の積み重ねが、その人の健康状態を決定しているのです。」と述べています。
先生の著書の中からアメリカの例を紹介します。
1977年、アメリカで食と健康に関する非常に興味深いレポートが発表されました。
そのレポートは、発表した上院議員ジョージ・S・マクガバン氏の名を取って「マクガバン・レポート」と呼ばれています。
当時、このレポートがまとめられた背景には、アメリカの国家財政を圧迫するほどの巨額にふくれ上がった医療費の問題がありました。
今の日本がまさに直面している問題を36年前のアメリカが抱えていたのです。
医学が進歩しているにもかかわらず、ガンや心臓病をはじめとする病気にかかる人の数は年々増え続け、それに伴い国家が負担する医療費も増え続け、ついには国家財政そのものをおびやかすところまで迫っていたのです。
なんとかしてアメリカ国民が病気になる原因を解明し、根本的な対策を立てなければ、アメリカは病気によって破産してしまうかもしれない。
そんな危機感から、上院に「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」が設立されたのです。マクガバン氏はその委員長でした。
委員会のメンバーは、世界中から食と健康に関する資料を集め、当時最高レベルの医学・栄養学の専門家らとともに「病気が増える原因」を研究・調査しました。
その結果をまとめたのが、五千ページにもおよぶ「マクガバン・レポート」です。
このレポートの公表は、アメリカ国民に大きな選択を迫ることになりました。
なぜならそこには、多くの病気の原因がこれまでの「間違った食生活」にあると結論づけられていたからです。
そして、いまの食生活を改めないかぎり、アメリカ人が健康になる方法はないと断言していたのです。
当時アメリカでは、分厚いステーキのような高タンパク・高脂肪の食事が食卓の主役でした。
タンパク質は体を構成するもっとも基本的な物質ですから、体をつくるうえでとても大切な栄養素だといえます。
そのため、動物性タンパクをたくさん含んだ食事をとることが、成長期の若者はもちろん、体の弱い人やお年寄りにもよいとされていました。
日本で根強い「肉こそ活力の源」という考えは、このころのアメリカ栄養学の影響といえるでしょう。
ところが「マクガバン・レポート」は、こうした当時の食の常識を真っ向から否定しました。
そして、もっとも理想的な食事と定義したのは、なんと元禄時代以前の日本の食事でした。
元禄時代以前の食事というのは、精白しない穀類を主食に、おかずは季節の野菜や海草類、動物性タンパク質は小さな魚介類を少量といったものです。
近年、日本食が健康食として世界的な注目を集めるようになったのは、じつはこれがきっかけなのです。
たしかに、肉を食べなければ筋肉が育たないとか、体が大きくならないというのは真っ赤なウソです。
ただし、動物性タンパクをたくさん食べると人間の成長が速くなるということは事実です。
最近の子供たちの成長スピードが速いのは、動物性タンパクの摂取量が増えたためと考えられます。
しかし、ここにも危険な落とし穴があります。
それは、「成長」はある年齢を超えた時点で「老化」と呼ばれる現象に替わるということです。
つまり、成長を速める動物食は、別の言い方をすれば、老化を速める食事ということになるのです。
60年代に入り高度成長期を迎えた日本は、アメリカに追いつき追い越せとばかりにあらゆるものをアメリカにならいました。
一方アメリカでは、1977年の「マクガバン・レポート」を機に、国家をあげて食事改善が進められてきました。
その結果は両国民の「腸相」に表れていると胃腸外科の世界的権威である新谷先生は言っています。
きれいだった日本人の腸相は、食生活の変化とともに年々悪化し、いまではすっかり肉食を常食としているアメリカ人の腸相に似てしまったと指摘しています。
それに対し、アメリカ人の中でも真剣に自分の健康を考え、高タンパク・高脂肪食を改善した人たちの腸相は、みごとに改善されてきて、大腸ガンやポリープの発症率も低下しているそうです。
これは食生活を改善することによって、腸相をよくできるという良い証拠と言えるでしょう。
新谷先生は、胃と腸こそ健康のバロメーターだと述べています。
人間の顔に人相の善し悪しがあるように、胃腸にも「胃相」と「腸相」の善し悪しがあるといいます。
人相にはその人の性格が表れるといいますが、胃相・腸相にはその人の健康状態が表れるというのです。
腸相の悪化は、大腸ガン、大腸ポリープ、憩室炎などさまざまな大腸の病気を起こすだけにとどまらず、子宮筋腫、高血圧、動脈硬化、心臓病、肥満、前立腺ガン、糖尿病などのいわゆる生活習慣病を発病していると先生は指摘しています。
さらに、「本来、人間の体というのは、病気にならないように、何重もの防御システムや免疫システムに守られています。
ですから、先天的な問題がなく、過度に不自然なことさえしなければ、多少のことがあっても病気にならないはずなのです。
その、本来病気にならないようになっている私たちの体を、病気にしてしまっている最大の原因は、長期にわたって少しずつ蓄積された『不自然な食事』と『不自然な生活習慣』にあります。
多くの人は、人間にとって何が良い食べ物で、何が良くない食べ物なのかを知らないために病気になってしまっている。」と述べています。
特に若いうちから健康への意識を高め、しっかりとした食生活と生活習慣を立て、注意と努力次第で病気は確実に減らすことができるのです。
このことをしっかりと銘記すべきです。
言うまでもなく、健康抜きの幸福なんてあり得ません。
合掌